UNISON SQUARE GARDENのツアー高知公演に参加してきました。
こちらは今年リリースされたフルアルバム『Ninth Peel』のリリースツアー2週目(!)にあたるのですが、日程と会場が発表された時点で気付いたのは、アリーナ・ホール公演が中心だったツアー1週目から一転、そのライブハウスでの公演の多さ(なんならすべてがライブハウス)。
ホールは椅子があるので助かるというところは結構あったりするのですが、それでもやっぱりライブハウスでの熱気というのは代え難いものがあります。そして、それが他ならぬユニゾンであるなら、ことさら。2012-2015年あたりにはこの会場でたびたびユニゾンのライブを観ていたのですが、あの熱狂の光景はロックバンド原体験として未だに灼きついています。そういうわけで、「X-pt.でユニゾンを観る」というのは、個人的にも原点に回帰するようなシチュエーション。そんなシチュエーションで観るユニゾンをどんな風に感じられるのか、非常に楽しみにしてきました。
そういうわけで、18時前にいそいそと会場に到着し、Tシャツを購入。すこし時間を潰しているとすぐに開場時間になったので入場します。整理番号は50番以内ということで割と前の方まで行けそうではあったのですが、もみくちゃになって観る、というよりは自分のペースで心置きなく楽しめる場所をキープしたいと思い、ちょうどいいところで待機。ソールドアウト公演ということで、場内に人が満ち始めたところで会場が暗転、2017年以来のX-pt.でのユニゾンのライブがいよいよ幕を開けます。
『絵の具』とともにメンバーがステージに姿をあらわし楽器を構えたところで、斎藤さんがギターのストロークとともに歌い始めたのはなんと『スカースデイル』!1週目のツアーと同じくメロディーの美しさが際立つ楽曲での立ち上がりですが、それにしてもアルバムツアーなのにまたしても1曲目がアルバムの収録曲じゃないというのはニヤリとさせられるところです。また、個人的にも、未だナマでは聴いたことなかった曲ということもあってなかなか嬉しい選曲だったり。
そして、お馴染みの「ようこそ!」の号令とともに続くのは『天国と地獄』、『恋する惑星』、『BUSTER DICE MISERY』、『23:25』、『kaleido proud fiesta』という、新旧のレパートリー、またポップサイドとロックサイドのメロディーを横断するような、アッパーすぎる5連打。こうしてライブの感想を書いていると、しばしば「間髪入れず」という言葉をよく使いますが、その極みとも言えるような間髪の入れなさ。当然、そんな様子ゆえに、こちらも「楽しい」「最高」ということ以外のことを考えられないくらいに意識を持っていかれて、細かいことは最早まったく覚えられていないというほど。勿論、会場内の盛り上がりもすさまじいものでした。
『kaleido proud fiesta』という大団円感あふれる楽曲で先ほどのセクションが終わったため、クライマックス感すらある(なんならここのセクションはそっくりそのままライブ後半に持っていけるくらいのものだと思う)のですが、まだまだライブは前半戦。メンバーのチューニングの音に耳を傾けている(そういえば、コロナ前にはあったメンバーの名前を口々に呼ぶやつなくなりましたね)と、おもむろに鳴らされるシャッフルビート。結構長めだったので、もうドラムソロ?と思っていると、斎藤さんのタイトルコールとともにはじまったのは、まさかのカップリング曲『ここで会ったがけもの道』。アルバムツアーではカップリング曲はやらないというイメージがあったのですが、これは2週目だからその限りではないのでしょうか。そのあたりのルールに関しては熟知できていないところも多々あります...。そんな意表をつく楽曲につづくのは、アルバムツアーらしい『アンチ・トレンディ・クラブ』。オルタナティブな曲調に映える赤く激しい照明がカッコイイです。すこしダークさも感じられるような空気を生み出したところで、鳴らされるのがミッドテンポの四つ打ちビート。おや?これは?と思っていると、なんと『きみのもとへ』!10代の頃、本当によく聴いていたものの、ついぞナマで聴くことは叶わなかったのですが、まさかここで聴けるとは...。憂いが香るポップなメロディーと小気味いいビートは改めてすばらしいです。そして、ここからはまたしても怒涛の展開。まず、「新曲!」という言葉とともに放たれたのは、先日リリースされたばかりの『いけないfool logic』。ここにきてユニゾン史上最大級のポップネスを感じさせる楽曲なのですが、ライブハウスの音圧のなかで聴いていると、しっかり今までの楽曲の延長線上にあるということが感じられます(音源からでもそれは感じられていましたが、より強くという意味で)。もうこの時点で新曲なのに凄まじい盛り上がり(とはいえ、この日はバラード以外はすべてそんな感じだった)なのですが、それをさらに過熱させるのが同期で鳴らされるアンセミックなコーラスを前置きに演奏された、近年のユニゾン最大級のキラーチューン『カオスが極まる』。来年には20周年を迎えるバンドですが、その非凡さというのを改めて実感するのは、まさにカオスが極まった場内(モッシュとか激しい圧縮、ダイブなんかはないものの)をこうして目の当たりにしたからこそです。
ここで2度目のブレイクタイム。あまりのセトリの密度とテンションの高さに息も絶え絶えというところ...。1週目のツアーにはあった緩急はどこ...!?こんなに無我夢中で飛び跳ねて腕上げて...っていうライブは、それこそ10代の頃ぶりかもなぁ、なんて思っていると、次の曲が演奏されはじめ、その曲がこの日初のひと息つけるようなナンバー『もう君に会えない』であることがわかります。別れに伴う想いを吐露するこの曲は、ほのかに灯された暖色系の照明も相俟って、非常に胸を打つものです。明確に言及はされていないものの、ある具体的な人物たちが想起される歌詞も聴いていて感傷的になってしまうところもあったり...。そんな空気を引き継ぐかのように鳴らされた『夏影テールライト』は、この流れだからこそ、いつも以上に歌詞とメロディーの美しさが際立って響いていました。余談ですが、この曲はアルバムでの印象が強すぎたために、「ジョークってことにしといて」というラストの一節を聴いてついつい身構えてしまったのですが、演奏が終わった瞬間に拍手があがったため、「あっ、次はないのね」と察せられるという瞬間がありました。
そうして、ついにライブも終盤戦であるということを示すように鈴木貴雄のドラムソロから繋がるセッションへ。キメ多めのものでしたが、それに完全対応している観客が結構いたのは(さっきの拍手の件も含めて)リピーターなのかな、はたまたこの場で予測して反応してるのかなとか思いつつ、どちらにせよこうして音源化されてない演奏に対応できるのはまじでスゴいなと思う場面も(どっかで既にやってたり、音源化されてるやつとかだったらゴメンなさい)。それはともかくとして、そんなクライマックスの幕開けを飾るのは、まさにシンプルながらもエッヂの利いたギターリフとキャッチーなメロディーが魅力のアルバム曲『ミレニアムハッピー・チェンソーエッヂ』です。1週目のツアーからは一転終盤におかれることとなりましたが、こういった重要な位置においてもしっかり映えるあたりこれから長いこと重宝される曲になっていくような気がしています。そして、ここで一気にギアをあげるように続けて繰り出されるのは『世界はファンシー』。ここの流れには相性の良さも感じられるというところも。
それにしても、この日のこれまでのセトリは意図的なのかどうなのか、アルバム曲が連なることが一切ありませんでした。そういう事情もあり、ある意味アルバムツアーであるということをあまり意識しすぎないままでここまで来たというところまであるのですが、ここでついに『Ninth Peel』のリリースツアーであるということを如実に理解させられるのが『フレーズボトル・バイバイ』→『スペースシャトル・ララバイ』の流れ。ここが連続するというのがちょっと予想していませんでしたし、なにより前者に関してはラストにくると思っていたので、心地よく予想を裏切ってくれた感じすらありました。こうしてアルバム内でもストレートなエールを携えていると感じられる2曲が後半に並び披露された(しかも衝動的だと感じるほどに力強い演奏だった)ことで、『Ninth Peel』の芯のうちのひとつを見られたように思えます。そして、そんな流れもひっくるめた上で本編を締めくくるのは、もうこれ以外にないと思えるほどのエールがこもった歌詞が象徴的な『Invisible Sensation』。手っ取り早くわかりやすいMCではなく、あくまでも曲と演奏とセットリストで表現しようとする姿勢は他のバンドのライブではなかなかお目にかかれないものですが、だからこそ逆に真摯さも感じるし、やっぱりUNISON SQUARE GARDENはカッコイイ哲学を持ったバンドだとそう思います。
本編も終わったということでメンバーが捌けるのですが、客電がつきBGMも流れているためアンコールあるの...?と恐る恐るアンコールをしていたら、1週目のツアーと同じく体感1分もしないうちにステージに戻ってきます。最早、捌ける意味あるのか!?と思うくらいなのですが、アンコールというライブのお約束と、可能な限りムダを削ぎ落し公演時間を短くするというバンドの目指す部分を同居させるとこうなるのだと思います。(スゴくいい意味で)シュールな光景。でも、どうせ出てくるとわかっていながら惰性でダラダラ手拍子しなくてもいいのは本当にありがたいです。そういうわけで、ここからは「おまけ」。
1曲目は、若干不遇な2ndアルバム(個人的には結構好きなんですけどネ...)収録曲の中では『23:25』と並んで披露される機会も比較的多い『ライドオンタイム』。とにかく跳ねて跳ねて、足の筋肉の限界をめざすみたいになります。久しぶりに聴きましたが、やっぱり楽しい。そして、この日のライブを本当の本当に締めくくるのは、『mix juiceのいうとおり』。本編最終盤で歌われていた内容にも通じるようなメッセージをもった楽曲なので一貫したものを感じつつも、それと同時に、シンプルに、とびきりハッピーなサウンドを持ったこの曲でこの日のライブが終わることへの多幸感たるや...。
「UNISON SQUARE GARDENでした、バイバーイ!」という言葉はなかったものの、ここでライブは終演。ただただ最高で、それこそ忘れたくても忘れられない夜になりました。備忘録という意味も兼ねてこうしていろいろと書いていますが、本当はもうひと言くらいに「最高だった!」と書ききってしまいたいくらいで、いろいろ書くほど野暮になるような、まさにそんな90分のロックショー。素晴らしかったです。
あらためて、本当に久しぶりの小箱でのユニゾンでしたが、凄まじい熱狂でした。バンドの意識としてはいつも通りだったのかもしれませんが、客席の熱気も相俟って、ちょっとやっぱりホールで観るのとはまったくちがうなと思いました。そして、この光景を観たからこそ、あの頃ユニゾンにハマっていたんだったということを改めて思い返しました。ステージはまともには見えないし、爆音すぎる瞬間もあるし、パーソナルスペースも保たれないしで、ライブを「観る」という点においては合理的ではない環境なのですが、それだからこそなのかなんなのか、感情が上振れしまくったとき、無茶苦茶に、無我夢中になる感覚がこうしたライブハウスにはやっぱりあると思いますし、まさにそんな感覚になりました。年甲斐もなく、10年前の『CIDER ROAD』のリリースツアー高知公演のときとまったく同じように楽しんだ、そういう感覚さえあったように思います。
そして、ユニゾンは距離が近い場所でこうした爆発的なアクトをできるからこそ、大きな会場でも多くの人を引き付けられるライブができるという事を実感しました。それは何度か、大きな会場で演奏するライブに何度か居合わせた今だからこそ思うことだと思います。機会があればワンマンだって、ツーマンだって、ライブハウスだってホールだってアリーナだって、どこで観れたって楽しいライブになる(それこそ、去年のツアー『kaleido proud fiesta』は素晴らしかったです)とは思いますが、やっぱり小箱でのワンマンは特別だなと思います。改めて、最高でした。
セットリスト
01. スカースデイル
02. 天国と地獄
03. 恋する惑星
04. BUSTER DICE MISERY
05. 23:25
06. kaleido proud fiesta
07. ここで会ったがけもの道
08. アンチ・トレンディ・クラブ
09. きみのもとへ
10. いけないfool logic
11. カオスが極まる
12. もう君に会えない
13. 夏影テールライト
-Drum Solo ~ Session-
14. ミレニアムハッピー・チェンソーエッヂ
15. 世界はファンシー
16. フレーズボトル・バイバイ
17. スペースシャトル・ララバイ
18. Invisible Sensation
en01. ライドオンタイム
en02. mix juiceのいうとおり
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