ここ1週間で印象に残った5曲 (2024年1月第5週版)

呪術の映画ぶりに映画館へ行ってきた(2021年のクリスマスイブぶり!)のですが、2000円払ってこれだけ濃い体験ができるのってスゴいよなあと思ったりしました。

 

 

206. ハイゲイン / ヒトリエ

 

2021年リリース作『REAMP』収録曲。

先日参加したライブでの光景を観て、今までは声出しが出来なかったためにこの曲のポテンシャルは発揮されていなかったんだなと改めて思いました。演者、観客ともに「これを待っていた」という感慨に充ちた瞬間であったというのは、ライブの感想のほうでも書いた通りです。

曲と想いが重なった相乗効果で感情のメーターが振り切れる瞬間のドキドキがたまらないからこそ、好きなバンドのライブには足を運ばずにいられない(wowakaさんがいた時のヒトリエはまさにそれが詰まったものでした)のですが、今回の『ハイゲイン』はまさにそれにあたるものだったと思います。そして、そう感じられたのは、他でもないシノダさん自身が作った曲だったからこそ。

3人が、wowakaさんの曲ありきのバンドとして続けるという選択をせず、あくまでも現在進行形のバンドとして歩を進めるという道を選んだからこそ、観られた光景でした。もう、言語化できない想いを全部全部ひっくるめてでてくるのが、「スゴかった」し、「最高だった」ということです...。

 

 

 

207. アンチテーゼ・ジャンクガール / ヒトリエ

 

※根拠のない論を展開してしまっている箇所があります...

2014年リリース『イマジナリー・モノフィクション』のリード曲。

先日のライブでじつに5年ぶりに披露されたということで、『ワールズエンド・ダンスホール』とともに、デッカいサプライズとなったのですが、イントロはじまった瞬間の歓声がスゴかったですね...。前フリが良かった(「3人になってからはやってない曲をやります」というやつ)のはありつつも、とはいえそれだけではそうはならんだろうと思えるくらいに、多くの人にとって待望だったというのを感じました。すさまじい熱狂でしたね。

そして、そういった光景も踏まえた上で、あらためて、ということで聴いてみた『イマジナリー・モノフィクション』はなんだか、ようやく腑に落ちたという感覚がありました。当時のライブ映像があまり残されていないことや、この時期特有の独特のミックスなどの要素が、2017年下半期からの後追いファン(遅...)ゆえに、ハマり切っていない感じがあったんですよね(『踊るマネキン、唄う阿呆』だけはアップデートされているということもあって、余計に、というのもあったと思います)。

今作は、鮮烈だった『センスレス・ワンダー』でのデビューからの流れと、リアルタイムで新譜としてリリースされたときの所謂邦ロックシーンの空気(四つ打ち四つ打ちアンド四つ打ち)との合致まで含めたリリースツアーの盛り上がり込みだったのかもしれないなとか勝手に想像しつつも、その空気感を追体験できる機会も当然なかったために(2019年に『ever ever ever』とともにナマで聴けたことがあったのですが、前の方で観ていたので客席がどうだったかは?)、リアルタイムで現場に居合わせた古参のファンの方との埋められないギャップがあったというところです。

それをようやく今回のライブの熱狂の光景を観たことで、すこし埋められたような気がします。当然、当時を知る人からすると、また違うというのはある(そもそも他でもないwowakaさんがいないですし...)と思うんですけどね...。ウワーン、カットなしでリリースしてほしい~~~。断片的に映像があるから全編収録していることは知っているんだ...。

 

 

208. 青 / ヒトリエ

 

2019年リリースの『HOWLS』収録曲。

4人体制時代のヒトリエは、そのタイミング・タイミングでのwowakaさん自身を常に反映した上でとどまることなくアップデートし続けた、まさにドキュメンタリーのようなロックバンドだったというのは音源からしてわかるものなのですが、こと歌詞においては、『IKI』以降にその内容・表現が一歩ステップアップしたものになったという印象があります。

それは、彼自身が、心血を注いでバンド活動を重ねてきたこと、そしてこうした時間を共有するなかでこの4人ならば何をやってもちゃんとヒトリエの音になるという絶対的な信頼感が芽生えたこと、それらを糧にして、このタイミングだから歌うべきもの(歌いたいもの)への欲求に迷いなく従うことができるようになったゆえ。

歌詞の世界観や「自問自答」というフォーマットは一貫していながらもやや抽象的とも言える表現の歌詞を提示していたメジャーデビュー直後が嘘のように、『リトルクライベイビー』、『目眩』をはじめとする『IKI』の収録曲、『アンノウン・マザーグース』、そして『ポラリス』と、歌っている対象と表現が段階的に具体的になっていきました。それはある意味で、wowakaさんの音が自由になっていく過程でもあったと思います。

そんななかでリリースされたのが『HOWLS』。wowakaさん個人の足取りをつぶさに音にした上でそのモードを取りまとめるというかたちでリリースを重ねてきたヒトリエでしたが、今作はそれに加えてヒトリエというバンドの可能性というところにも着目した上で追求、拡張した作品になったという印象があったり(『ポラリス』という大前提があるからこそ、自由に取り組めたという感じも)。というのも、今作ではこれまでになかったようなさまざまな方法論(これは曲、詞、アレンジすべてにおいて)が高い強度を持って取り入れられているからです。

跳ねるようなビートの『伽藍如何前零番地』、これまで作ってきた高速ロックナンバーたちの延長線上にありながらもエイトビートを取り入れることでバンドのあらたなビート感を提示する『コヨーテエンゴースト』、wowakaがまるっきりひとりで制作を行った『SLEEPWALK』、尊敬してやまないロックバンドへのリスペクトをストレートすぎるほどに表現するロックナンバー『殺風景』、サビの重心を落としたビートが力強い『LACK』、シノダがオケを制作した『Idol Junkfeed』......など、様々なアイディアをかたちにした様は、まさにバンドの充実ぶりを示していると言えるものです(インタビューによると難産ではあったようですが...)。

そして、なによりも『青』。メンバーのイガラシさんがとくに強く推したというエピソードも残っていますが、曰く、その理由が「こんな歌詞を書くようになったのか」(爆音試聴会のトークイベント後に書いた個人的なメモより)と思ったから。それもそのはずというように、この曲はwowakaさんの個人的な別れのエピソードが歌詞のスタート地点になっています。別れというのは、非常に普遍的で、誰にでも起こる出来事です。本人の内心の葛藤からしか生まれ得ない全方向への感情をひたすら歌にし続けてきたwowakaさんが、ここではじめて普遍的な出来事を曲に落とし込んだこと、これはヒトリエにとってもエポックメイキングで、まさに転機というほどのものであったと思います。だからこそなのか、当初はボツにされかけていたようなのですが...(こちらもメモから。ちなみに説得したら考え直してくれたようです)。

前置きが長くなりすぎたのですが、なんで印象に残ったかというと、ひさしぶりにライブで聴いたら、この歌詞の普遍性がゆえに、wowakaさんの曲をシノダさんが歌った際に必ず生じる違和感(これはもう歌詞を書いた人が違う以上、仕方がないことなので現在はまったくマイナスには捉えていないです)がなかったから。なんなら、現在の3人がこうしてヒトリエを続けている姿にまで重なっていく感じがありました。この日のライブのテーマが「青」なことまで含めて、もうそりゃ「青」だよなあと思うほどに。

ライブに行くたびに、3人になったヒトリエを、すこしずつですが、受け入れられていっている感じがあります。それは、結局のところヒトリエの曲をこの世で誰より理解しているのがメンバー3人だから。結成以降の活動をひとまとめにしたような2日間のセットリストのなかで、「青」と題されたライブ2日目の後半、2日間のすべてを統括するような曲順で『青』を演奏されたことで、それを深く感じられたような気がしています。

 

 

209. Meteor -ミーティア- / T.M.Revolution

 

機動戦士ガンダムSEED』挿入歌。

日曜日に観てきました、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』...。SEEDは観ていないのですが、まじで観て!と勧められたので、この公開に伴ってYouTubeにアップされていた30分ほどの総集編×2で予習をしてから劇場へ...。

映画の感想ですが、とにかくド派手! こんなん絶対ワクワクしちゃうよ~ってくらいの後半のスピード感、スタリッシュな機体たち、時折挟まれる確信犯的にシュールな場面、SEEDシリーズすべてを統括する「愛」についての問答......これはもうやられましたね...。駆け引きがつづく中盤あたりでちょっと話のスジがわかんなくなる瞬間もあったんですけど、そこはしっかりとわかりやすく戦況が整理されたのもありがたかったです。

そして、ここで本題。今作の盛り上がりのピークで流れるのが、この『Meteor -ミーティア-』。これにわかのくせにめっちゃ鳥肌立ちました。18年待った人たちなら涙出るだろうなってくらいにカッコよすぎ! アニメにおける挿入歌って、ハマったときの爆発力がやっぱりスゴいですよねえ...。いや~スゴいものを観ました。また観たいなってくらいのかんじがあるくらいにパワーがある映画でした。

 

 

210. 去り際のロマンティクス / See-Saw

 

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』EDテーマ。

良い曲だ~...。まさに梶浦節というメロディー・アレンジと、それに負けてしまわない個性をもった石川智晶さんの歌声。これを、2002年の『あんなに一緒だったのに』と変わらぬテンション感でいまもやることができる。まじで奇跡みたいなユニットだと改めて思います。

ちなみに、サビのリズムセクションがシンプルなエイトビートなのが、個人的に非常にツボです。映画館の爆音で聴くと迫力ありすぎ。