2023/11/24 ずっと真夜中でいいのに。 原始五年巡回公演 「喫茶・愛のペガサス」 @高知市文化プラザかるぽーと

デビューから5周年を迎えて開催されたずとまよのワンマンライブツアー高知公演に参加してきました。

 

 

まず、「『秒針を噛む』からもう5年も経つの!?」と驚いてしまうくらいなのですが、2018年8月リリースということで本当に経つようです。時の流れは本当に早い...。

ずとまよ初の高知公演ということや、個人的なところでもCDJ19/20ぶりに観るライブ、また初のかるぽーとでのライブということで、割とソワソワしてしまうところもありながら、とりあえず18時過ぎにいそいそと会場へ。事前に注文していたグッズを受け取ってから座席へ向かうと、2階席の後方ではありながらもしっかりと1列ごとに傾斜がついていて見晴らしの良い席であるということがわかります(さすがに距離はありますが)。今回のツアーはタイトルからもよくわかるように喫茶店がひとつのモチーフとして置かれており、客席から見えるセットもまさにそのもの。こうして、ワンマンを観るのは初であるため、どんなライブになるのかなと思いながら、着席して開演を待っていると、「ずとまよのライブといえば、しゃもじ。こちらで販売しています!」とスタッフの方が客席でしゃもじとライトを販売しており、それがなんともシュールな光景だなと思ったり。しゃもじライトの動作確認なんかをしているうちに公演に関する注意事項を説明するアナウンスが流れ、開演時間を数分すぎたあたりで暗転。

 

まず、ACAねさんの登場に先駆け、昭和アニメライクな絵柄のうにぐりくんとペガサスのアニメーションが流れはじめ、このライブの世界観を示します。BGMもまさにそれに寄り添った選曲(ちょっと調べたところによると『パジャマのままで』だった?)ですが、DJ的アプローチでその空気は一気に現代に引き戻され、ライブが開幕。スタートを飾るのは意表をつくバラード曲『マリンブルーの庭園』。個人的にも数か月前、繰り返し聴いていた曲であるということもあり、非常にうれしい選曲です。ACAねさん含め、ステージの様子は正直よく見えるというとは言い難い(ACAねさんがステージ上部にいるということを確信できたのすら曲後半あたり)のですが、音はしっかりとよく聴こえるためとにかく心地よいリズムに身を任せます。そんなドリーミーな1曲目の空気感を引き継ぐような2曲目はメロウなナンバー『ミラーチューン』。『沈香学』でも最大級に好きな曲であるため、早くも!というきもちもあったり。しかし、惜しいことに、初めて手に持つしゃもじの扱いに戸惑っているうちに100%は楽しみ切れなかったというところも...。これは悲しい。とはいえ、そんなことでめげてはいる暇はありません。なぜなら、この後序盤にして、『お勉強しといてよ』、『勘冴えて悔しいわ』と大キラーチューンが連打されるからです。ただでさえ元からダンサブルであるのに、それを超えていくかのように原曲をはるかに凌ぐグルーブ感で進化したこの2曲は、もう、ブチ上がる他ない...。2階席は、自分と似た様子で、ワンマンでずとまよを観るのは初めてという雰囲気の方が多かったのですが、このパンチが効きまくった流れには、各々が思い思いのノリ方・踊り方で楽しんでいて、観客を巻き込む力のスゴさを感じると同時にその光景はスゴく健全だな~と思ったりもしました。そんな一瞬で沸騰したかのような客席にハイハットのカウントともに間髪入れず放たれ、さらに火を放つのは『馴れ合いサーブ』。アルバム内でも強い存在感を放つ、ロック色が強いナンバーでしたが、こういった曲はナマで聴くとよりスゴいと相場が決まっています。その通りに、歪みまくったベースとギター、それに負けじと叩き鳴らされる爆音のドラムス、そしてACAねさんのキレまくった歌唱には鳥肌...。そんなハードなサウンドの今曲ですが、曲中、上手のあたりをペガサスのぬいぐるみ(ラジコン?)がウロウロしているのが見え、そのシュールな様子にはクスッときたり。

アップテンポな楽曲で畳み掛ける様子は序盤にしてクライマックスといえるくらいなのですが、まだまだライブははじまったばかり。ということで、はじめのMCコーナーではACAねさん(ペガサスっぽいモコモコしたブーツが印象的なのですがめちゃくちゃ身長が高く感じます。厚底?それともそもそも背が高い?)からこのツアーのコンセプトと、それに則った上での楽しみ方についての説明が。とりあえず、しゃもじの使うタイミングと使わないタイミングはある程度指示があるとのこと。また、しゃもじを持っていない人は拳でも、またゆったり楽しみたい人はここは喫茶店だからそれも勿論アリとのこと(一言一句は覚えてないのでニュアンス)。非常に親切です。そして、そんな喫茶店コンセプトをあらためて示すようにレトロな音質での『プレイバック Part2』→『スローモーション』→『あなたに会えてよかった』→『夜中のキスミ』がMC後半でザッピングされるかのように移り変わっていくと、ここで演奏がはじまったのが『夜中のキスミ』。まさに歌謡曲ど真ん中の名曲という3曲につづいて流れたことで、よりメロディーの哀愁が強く色濃く香るという印象もあります。そして、このあたりでずとまよの歴史をメジャー・マイナー問わず縦横無尽に行き来するようなセトリを鑑みて、今回のツアーは『沈香学』のリリースに伴うものというよりもツアータイトルどおり5周年の歴史をさらう内容なのかなと薄々思い始める中、続くのが『違う曲にしようよ』ということで、それを半ば確信。前曲に続くようにミッドテンポかつダンサブルな楽曲ということで、序盤の狂騒から一転、レイドバックしたサウンドが楽しめるセクションです。アコースティック調のアレンジで生まれ変わり、よりメロディーの美しさとACAねさんの歌唱が前面に押し出された『不法侵入』(鳥肌が立つほどスゴかったです)では曲中にうにぐりくんの着席するかわいらしいアニメーションがモニターに映し出されたために、ここからは着席でじっくりと耳を傾けます。続いて披露された、サイケデリックさすらも感じるダブ調の楽曲『上辺の私自身なんだよ』はそのディープな音像が非常に心地いいです。

濃い余韻を残しながらも、ここで再びMCコーナーへ。喫茶店を想起させるようなBGMが流れる中、曰く「ランチタイム」ということで、日替わりメニューをA~Cの中から選んでくださいとのこと。詳細なメニュー名とかは全然覚えられていないのですが、Aが『雲丹と栗』(選択肢を提示された時点ではピンときてなかったけど)、Bが『奥底に眠るルーツ』を想起させるもので、Cが「薄っぺらい生地に幻の青魚を挟んだバターサンド」的なものだったということは微妙に記憶にあります。どれかな~と悩んで選び切れないでいるうちにCまで来てしまったので、曲はわからない(「魚」というキーワードだけで『ハゼ馳せる果てるまで』かな、くらいは思っていた)ものの、とりあえずここで拍手するという優柔不断ムーブをぶちかまします。しかし、甲乙つけがたいくらいの拍手の量だったようで、「......もう一回聞いてもいいですか?」と今度はAとCの2択へ。ここではCのほうの拍手(しゃもじ拍子)が明らかに多かったことで、高知での日替わりランチメニューはCに決定しました。

オーダーしてから、「じゃあ、屋上に行きまーす」と言いのこし(地味にこの後も、上がる時も降りる時も「じゃあ、上がりまーす」、「じゃあ、降りまーす」と毎回律義に言っていてちょっとシュールさを感じます)、ACAねさんはセット上部へ。この間、料理人が調理しながら「カツオ!」と言っていてこれまたシュールです。そして、ここではご当地MCとして、高知観光を楽しんできたことが明かされる(インスタのストーリーにもアップしていた龍河洞、またカツオも食べたよう)のですが、途中で地名を言い間違えたのか、料理人が「高知...?」と言い、「あっ...高知です...」とACAねさんが訂正するという一幕も。先ほどから存在感を放っている料理人がすかさず「カツオ!カツオ!」と言うことで一度気を取り直して、ご当地MCというだけに留まらない、ご当地アレンジ(勿論、しっかりとコンセプトに併せて「味付け」と表現されていました)でCのメニューが仕上げられるという説明がされます。そういうわけで、この日は高知だけの特別アレンジとして、龍河洞の「妖しさ」、「階段の険しさ」(みんなで登りきった感慨みたいなところまで含めた話だったはず)になぞらえた注文を行い、演奏へ。歌がはじまるまでは、次の曲がなにかということもわからないくらいの、注文に則った濃い演奏が展開されるなか、徐にACAねさんが歌い始めたのは『またね幻』。原曲の面影を残さないほどに姿を変えたこの曲は、(この場にいてナマで聴いているからこそというところはありつつも)原曲よりも好みかもしれない、と思うほどでした。

そんな、実力派揃いのずとまよチームだからこそというようなコーナーを終え、続くのは名曲『正しくなれない』。レイドバックした空気を一気に塗り替える強いサビメロディーと歌詞はこうしてナマで聴くとより素晴らしいです。サビの赤色の照明もそんな楽曲のカラーも感じさせ、とても印象的。そして、さらにエモーショナルさを加速させるのが、これまた名曲の『眩しいDNAだけ』。ライブならではの、ラスサビ前のアレンジは本当に最高...。じつに熱い流れにこのあたりで観客も一気に起立しはじめます。そして、ここで発された「まだまだ行くよ!!」というブチ上がらざるを得ない号令とともに続くのは『マイノリティ脈絡』、『低血ボルト』、『残機』という、これまたブチ上がらざるを得ない3連コンボ。とくに『残機』は前奏として長めのベースソロを取り入れた上で、アウトロの尺も延長されるという進化っぷりを果たしており、原曲からして感じていた「ライブ映えするであろう曲」という印象をさらに超えてくる鮮烈さでした。

そんな熱狂もここでひと段落。ここまでの「喫茶・愛のぺガサス」というコンセプトに準じた演者的な姿からは一度離れて、「ずとまよのACAね」として5年間活動を続けてこれたことに感謝をした上で「始まりの曲です。秒針を噛む」と告げ、未だに代表曲として名を挙げられることも多いデビュー曲『秒針を噛む』へ。イントロ自体の引き込まれるようなオーラは2020年の年明けすぐの真夜中にCDJで聴いたときと変わらず鮮烈なものですが、こと歌唱や演奏に関しては「謎に包まれたアーティスト」感満載だったあの頃とは受ける印象がまったく変わっており、ナマだからこそという熱をひたすら強く感じるものでした。ライブを重ねる日々のなかで、視覚的な部分だけでなく、演者としても同時に進化してきたんだと思います。ここで改めて、このツアーの主題のひとつでもある「5周年」という時間の積み重ねについて思い馳せたりもしていました。それは、ライブを観ていないあいだにラスサビ冒頭のコールアンドレスポンスがしゃもじ拍子で定着していたことも含めて(ちなみにこのしゃもじ拍子、強弱だけに留まらず、「左から右へ」、「右から左へ」というようなものもあり、テクニックが多少要求されるものでした)。

そして、ここからはいよいよラストスパートへ。巨大なミラーボールがまわる様子が強烈な印象を残す『MILABO』はこの会場すべてを巻き込むほどの多幸感を伴っており、現在のずとまよのライブのスケールの大きさを感じられます。延長されたアウトロではサンプラーを連打するかのように「BOW!」が連発され、よりいっそうの盛り上がりを煽るように鳴り響いていました。そうして迎えた本編ラストは、ずとまよがライブをすることで伝えたい想いについての言葉と「踊り忘れず!」という言葉を前置きに披露された『綺羅キラー』。インパクト抜群のラップパートを歌うMori Calliopeが不在であるためその部分は歌唱されず、ちょっと寂しさは否めないところですが、その不在を補うようにサビで行われる『FLY AGAIN』(MAN WITH A MISSION)をほんのりと彷彿とさせる振付が楽しいですし、また、曲間で演奏を止めて叫ばれた「高知来たよ!」というACAねさんの言葉は、この日この場所だからこそということも改めて感じられて、素直に嬉しいものです。

非常に密度が高い本編でしたが、まだまだやっていない曲もあります。ということで、アンコールへ。1曲目はステージ上部に座ったACAねさんによって奏でられる初期の名曲『サターン』。弾き語りで演奏されることで、まったく別の曲に聴こえるほどのセンチメンタルさを感じられます。そうしてひととおり歌い終えたところで、曲中にステージに現れていたサポートメンバーも交えて、ブラスセクションを軸にしたアウトロへ。これ良かったですね~...(素)。この後、MCを挟んで(ここでの話の内容はすっかり失念してしまったので映像化を待ちます...)披露された『あいつら全員同窓会』はサビの振りが楽しい、まさにライブ完全対応型の楽曲で、5年後もかわらず演奏されてるんだろうなと思うほどの熱狂です。

ここでふたたびMCへ。今回のツアータイトルはACAねさんが愛聴しているPrinceのセルフタイトル盤の邦題から拝借したことが明かされ、その響きにインスピレーションを受けて今回のツアーのビジュアルに繋がっていったという趣旨の話をした上で、この後演奏される楽曲の歌詞になぞらえるように「ずっと真夜中でいいのに。の原点」を綴った曲として、『花一匁』をタイトルコール。個人的には『沈香学』でもっとも好きな曲ということもあって、こうしてライブ会場にまで足を運んだのはこの曲が理由というところまで実はあったりするのですが、その期待にまったく違わないし、それをはるか大きく超えてくるほどの名演...。ライブの終わりを惜しむように奏でられる長尺のソロ回し(Open Reel Ensenbleは、高知らしく「ミレービスケット」というご当地お菓子の名前を口に出すという一幕も)、先ほどのMCを受けた上でよりリアルに響く歌詞、サビで頭上で腕をくるくる回すような振り......そのすべてが、この曲の素晴らしさを増幅していて、アンコールラストという超重要なポジションを担ってしまえるほどの名曲であるということを改めて実感しました。この日一番でしたね...。まさに大団円。素晴らしすぎました。

この濃さで2時間!?と思ってしまうほどのライブもついに終わりを告げ、ACAねさんはこの日の感謝を伝えたのち、ひと呼吸おいて「楽しかったです!!」とマイクを通さないナマの声で叫んでいました。もう、それはこちらもです...。その後、ACAねさんのまわりにモクモクと濃いスモークが立ち上り、なんだ?と思っていると、まるで忍者かのようにくるくると舞台裏に消えていきました...。「ご来場ありがとうございました、本日の営業は終了いたしました。またのご来店をお越しをお待ちしております」というACAねさん(たぶん)のアナウンスが流れて、「喫茶・愛のペガサス 高知店」も閉店。

 

じつは序盤はそのコンセプチュアルな部分に、ショーに通じるような構築的な部分を強く感じていた(良い・悪いではなく)りもしたのですが、後半につれてACAねさんだからこそ、ずとまよだからこそ、という想いが吐露されるシーンもあり、スゴくグッときていました。自分は、この人がやるからこそ、というものが見えるライブにやっぱり弱いです。顔出しは未だしていないし、歌詞も一見して分かり易いというようなものでもなかったため、曲は好きなもののどこか核心に触れられていないという印象もあったずとまよ自身とその楽曲が、これまでよりもずっとリアルに感じられたのは、こうしてライブを観られたからだと思います。良すぎるライブでした。

 

 

セットリスト
01. マリンブルーの庭園
02. ミラーチューン
03. お勉強しといてよ
04. 勘冴えて悔しいわ
05. 馴れ合いサーブ
-MC-
06. 夜中のキスミ
07. 違う曲にしようよ
08. 不法侵入
09. 上辺の私自身なんだよ
-MC-
10. またね幻
11. 正しくなれない
12. 眩しいDNAだけ
13. マイノリティ脈絡
14. 低血ボルト
15. 残機
-MC-
16. 秒針を噛む
17. MILABO
18. 綺羅キラー
en01. サターン
-MC-
en02. あいつら全員同窓会
-MC-
en03. 花一匁

 

 

 

トップページ