はじめに
諸々のガイドラインもある程度緩和されはじめ、コロナ禍に入る前ほどではありませんが、ある程度身動きがとれるようになってきました。それとともにライブにも再び足を運べるようにもなり、聴く音楽もすこしずつ回帰しつつあるというような感覚がある時期でした。
楽曲部門
10位 逆夢 / King Gnu
前年のクリスマス・イヴに公開され大ヒットした劇場アニメ『呪術廻戦0』のEDテーマ。
コロナ禍の自粛期間にハマってからというもの、すっかりのめり込んでいた『呪術廻戦』の劇場版ということで、もうどうしてもネタバレを食らわずに観たかったので、公開初日に有給を取って朝イチで観に行ったのですが、エンドロールの『一途』に続き流れ始めたのがなにか聴き覚えのない楽曲。これがこの『逆夢』でした(実際には深夜の初回上映に併せる形で情報公開はされていたようなのですが、たまたまSNSをまったく見ていなかったために何の情報も入れずに劇場で驚くことができたのでラッキー)。
個人的には代表曲『白日』の空気感を踏襲しつつ、よりスケールアップかつビルドアップさせたようなロックバラードだと思っているのですが、初めて聴いたときからこれは!という印象を受けていました。King Gnuとしては過去最大級に苛烈なロックチューンであり、強烈な爪痕を残した『一途』に続く楽曲としてももう間違いないもので、コロナ禍で大分落ち着いていた熱もすっかり再燃するきっかけになった、という出来事込みで大変思い入れもあります。
9位 undo / ヒトリエ
3人体制になってからは、2枚目となるフィジカルリリースとなったシングルのカップリング曲。シノダ作。
表題曲の『風、花』(ゆーまお作)にも繋がるような、切なさと軽やかさを纏った楽曲なのですが、もうなんといっても、前作の『Milk Tablet』につづいてカップリングが良い曲続き(個人的にカップリングが良いバンドは間違いないという持論があります)だと、もう改めてスゴいバンドだと言う他ないです...。
8位 Neon Beauty / ヒトリエ
3人体制では2作目となったアルバム『PHARMACY』。こちらはシノダ作。
幻想的なシンセのサウンドとアルペジオの絡みは美しいという第一印象をまず持つものですが、そこは踊れるサウンドに定評があるヒトリエ。サビではしっかりビートが前に出てきます。こういったバランス感覚はそれこそ『undo』にも見られたもので、個人的には「3人体制のヒトリエ」ならではとも感じています。これからも育てていってほしい路線だなとすらひそかに思っていたり。
7位 Quit. / ヒトリエ
こちらも『PHARMACY』収録。今作では唯一となるイガラシ作です。
今作はシンセのサウンドを多く大胆に取り入れた前半にはじまり、後半に向かうにつれ少しずつロックサウンドに回帰していくという印象があるのですが、殿を務めるこの曲は、まさにロックバンドならではという仕上がりのストレートなバラードとなっています。エモーションにあふれたメロディーも、それに負けないくらいの哀愁に塗れた歌詞も、そのどちらもが最高にグッとくるものです。そして、ギターの音も良いんですよね~。リリースツアーでは歌い出しのコードバッキングの音にゾワッとするくらいでした...。ん~~、もう、この曲に関しては好きなところがめちゃくちゃ多いですね...。
それにしても、イガラシさんって近年のパブリックイメージ(寡黙。でも、これに関してはヒトリエ初期の様子なんか見ているとすこしずつ作り上げてきたものという感も...)とはウラハラに、この『Quit.』をはじめ、『イメージ』やJudgementの『ジュリエット』、岸田教団&The明星ロケッツに提供した『群青』など、作るメロディーに人懐っこさを強く感じるものが多いんですよね。業界に友達が多いというあたりからしても、もう人柄がでているんだろうと思っています。
6位 アニマ / KEYTALK
インディーズ時代からリリースしてきたKTEPシリーズとしては久しぶりとなる、『KTEP4』に収録された楽曲。フィジカルとしては47都道府県ツアー限定のリリースです。
ギターの小野武正が手掛ける曲は、ストイックなバンドサウンドを持ったものが多く、KEYTALKのライブバンドとしての熱さや楽しさに直結するようなテイストを持ったものが殆どだと思っているのですが、この『アニマ』はまさにそのど真ん中。ライブハウスの熱気を感じるようなパンキッシュなツービートと、サビで転調して一気に勢いを増すメロディーが最高に気持ちがいいです。
こういう楽曲が定期的に出てくるからこそ、KEYTALKの活動を追いかけるってほんと辞められないというところもあるんですよね...。
5位 花の塔 / さユり
2022年夏に放送され、大きく注目を集めたTVアニメ『リコリス・リコイル』のEDテーマ。
こちらはしっかりと流行りに乗り遅れるかたちで秋頃になってアニメを観たんですが、濃い人間関係とハデなアクション、キャラの可愛さ(クルミのビジュがめちゃくちゃ好きです!!)、とキャッチーの塊みたいな内容にもうめちゃくちゃハマりましてね...。となると、作中の良~~いところで流れはじめるこのEDもいっしょに好きになるというのはもはや必然なんですよ...。
ちさととたきなの関係にもそっくりそのまま置き換えられるような親愛の模様が綴られた歌詞が良すぎ...。あと、この曲、1サビで一気に転調するアレンジが印象的なんですが、2番では転調しないんですよね。そこも面白い試みだと感じられて好きなところです。
4位 カメレオン / King Gnu
菅田将暉主演『ミステリと言う勿れ』の主題歌として起用され、大きなヒットとなったシングル。
King Gnuの強みは、記名性が高く唯一無二な井口の歌声という部分が一番に挙げられると個人的には思っているのですが、その強みを音楽制作チームとしては一つの到達地点に達したとまで思えるような緻密なアレンジと、美しいメロディーを以てして過去最大級に引き出した楽曲だと思っています。環境の変化・時間の経過とともにあの頃とはまったく違う顔を見せるようになった人をカメレオンに例えた歌詞も相俟って、これがポップミュージックのフィールドで表現できる切なさの極致なのではないでしょうか、なんて大袈裟ながら思ってしまうほど...。
当時、『一途』、『逆夢』ときていた上で、それほど間を空けずにリリースされたのがこの『カメレオン』だったので、もうすっかりやられてしまいましたね...。
3位 KICK BACK / 米津玄師
放送前から国内外で注目を集めていたTVアニメ『チェンソーマン』のOPテーマ。アレンジには『BOOTLEG』収録の『アリス』以来にKing Gnuの常田大希が参加しています。
漫画で読んでのめり込んでいた『チェンソーマン』のアニメということで、誰がOPを担当するのだろうと思いめぐらせる日々でした(個人的にはクラシックやノイジーなパンク、アブストラクトなヒップホップ、若しくは商業ラインに乗る現実的なところでmillenium paradeあたりが合うんじゃないかなと思っていました)が、発表されたのは米津玄師!これはスゴい曲がでてくるんじゃないかと思っていたら、もう本当にスゴい曲でした...。
ハチ時代~米津名義の初期を彷彿とさせるスリリングかつスピーディーな曲調(ささくれだったような歌声もこれまた懐かしい)に、キャリアを重ねてきた今だからこそというようなフックを仕掛けまくったまさに会心作で、『チェンソーマン』の主題歌としても最高ですし、近年のポップ路線をひっくり返したということで米津の楽曲としても最高な仕上がり...。
この年の10月にライブで聴く機会もあったのですが、リリース前だというのにすさまじい盛り上がりで、新しいライブアンセムが出来たのを目撃したという意味で鮮烈な光景でしたね...。
MVが面白すぎたこととか、まだまだトピックもあり、これだけすべてが噛み合ったら、空前のヒットになるのも必然と今振り返って思います。
2位 風、花 / ヒトリエ
TVアニメ『ダンス・ダンス・ダンスール』のEDとして起用されたシングル曲です。ヒトリエとしては、『YUBIKIRI』、『faceless enemy』に続くゆーまお作となりました。
どこか懐かしさもある哀愁と爽やかさを携えたメロディーはともすればヒトリエっぽくないとすら思えるほどの圧倒的な歌謡性。そんな強力なメロディーを活かすために演奏はいつになく一歩引いているという様子も伺えますが、要所要所でしっかり前に出てくるために、ヒトリエ楽曲としてリリースする上での引き算の塩梅としては絶妙なものです。
とどのつまりは、過去類を見ないほどに普遍性を帯びているということで、バンドの可能性を拡張した上で、まさに新たな風を吹かせた楽曲であると思っています。
1位 ステレオジュブナイル / ヒトリエ
2022年の1月にリリースされたデジタルシングル。
初めて聴いたときに、もうこの曲さえあれば、ヒトリエはこれから何年先、なんなら10年だって、続いていくだろうと思いました。
歌手部門
01位 ヒトリエ
02位 UNISON SQUARE GARDEN
03位 水樹奈々
04位 B'z
05位 米津玄師
06位 坂本真綾
07位 King Gnu
08位 KEYTALK
09位 Mr.Children
10位 ネクライトーキー
おわりに
この年は、なんといっても大名盤『PHARMACY』を生み出したヒトリエですね。前作『REAMP』はどうしたってwowakaの逝去を強く連想させるアルバム(今思えば、一度区切りをつけるための内容だったようにも感じるところも)だったために、悲しくて殆ど通して聴けないくらいだったのですが、いよいよそのモードから脱して制作されたこの作品はwowakaとともに練り上げてきたバンドのグルーブをしっかり残しながらも、それと同時にこの3人で続ける意味(wowakaの模倣になっていないことや、3人の個性が見えること)を感じさせるもので、もうこれは本当に素晴らしいものでした。
そんなヒトリエに次いで、活動の鮮烈さに惹きつけられてよく聴いていたのがKing Gnu。『白日』のバンドというイメージが先行しているところ(あの一発があまりに強烈すぎただけに仕方ないとも思いつつ)にすこしもどかしさも感じていたのですが、ここでついにそれをひっくり返したように思います。millenium paradeでの活動からのフィードバックもあったのか、よりスケールアップした音像と練り上げられたアレンジ、さらに大衆性を増したメロディーから生み出された音楽は、まさに「King Gnu」というバンド名から生まれるイメージとも合致していくものになったのではないでしょうか。
そして、制限下ではありますが、ライブにも参加できるようになり、その影響で聴き込む、というコロナ前のルーティーンも復活しました。歌手部門で名前が出てきているバンド・歌手は、King Gnuと坂本真綾を除いたすべてがライブへの参加が起因となっています。なかでもUNISON SQUARE GARDENのライブは素晴らしかったです...。
コロナ禍でまったく観れなかった鬱憤を晴らすかのように様々なライブへ足を運んだ年でした。長いブランクと昔ほど数を観るという感じではないため、コロナ前ほどの「これがなくちゃ生きられない」というほどの重い感情は生まれなくなりましたが、それでもそこらの趣味とは比べようもないくらいのワクワクはやっぱりあります。
とはいえ、こうしてライブが行われるようになったくらいですので、世の中もすっかり動きはじめています。年齢も年齢という感じになってきたため、コロナだからと先延ばしにしてきた「これからの人生をどうするのか」という命題に向き合っていかなければなりません。答えが出ない問い...。変化に伴う精神への負担...。悩んでいるあいだにも進む時間...。つまり、相変わらず精神はギリギリ限界だったという感じです!!きびし~~!!
そんな2022年でした。